映画学メモ
日本ではまだイマイチ馴染みの薄い「映画学」なるものを、イギリスの大学から実際の映画学の授業に沿うかたちで紹介していきたいと思います。まー気楽にいきましょう。
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映画学入門 Week 2(つづき)
「物語以前」-視覚的アトラクションとしての映画(つづき)

どうやら映画学Blogの同志フィルム・アカデミアさんもパソコンのトラブルということで、大変そうであります。なるべく早く問題が解決するといいのですが・・。

さてWeek2の続きです。
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ここ何週間くらいは古い映画の話になってしまいますが、よろしくお付き合いくださいませ。映画学ってのは、古い映画だけやるもんじゃないんですけどね。まぁ歴史はやはり大事なので。



2、アトラクションとしての映画
今は映画っつうと物語(narrative)があるのが当たり前みたいな感じじゃないですか。でも初期の映画ってのはそうじゃなかったんですね。勿論物語的なものは存在してはいるけども、今僕らがフツーに映画を見るように物語を軸に映画が展開していくわけではない。んでは初期の映画の軸、というか中心になっているものは何かというと、それは単純に映像がある、絵が動くという楽しさ、驚き、喜びのようなものなんですね。つまり、映画の内容じゃなくて、映像そのものがエンターテイメントであったわけです。これがつまりアトラクションとしての映画(The Cinema of Attraction)といわれるもので、トム・ガニング(Tom Gunning)という人が言い出した考え方です。別な言い方をすると、まだ映画館というものが見世物小屋とあまり変わらなかった時代ということができるかも知れません。





さてそんな時代の映画を代表するのがジョルジュ・メリエス(Georges Melies) さんです。1861年から1938年まで生きた人でありました。
GM-01-A.jpg

僕はこのメレイスの映画が大好きなんですねー。とても愛嬌があって温かみがあって、ホント想像力豊かな感じがイイんです。メレイスの映画というのは、簡単に言うとトリックや特殊効果をふんだんに使った空想の冒険活劇ですね。「トリックや特殊効果」と言っても今見ると勿論かなり単純ですが・・・。でも彼が考え出したり、彼の作品によって有名になった特殊効果は沢山あるんです。

一番単純なやつだと、人間が一瞬で消えるってやつですね。えらい単純ですが、ようするに
vl1.jpg
ここまで撮ったあとカメラを止めて、女の人を画面の外に出す。そんで
vl2.jpg
この状態でもっかい撮影開始。それを繋げると女の人が突然消えるように見えるわけですね。でもこういうのも単純ですがやっぱり最初に考えた人は偉いわけで、当時はとても人気があったようです。

メリエスの作品の中で一番有名なのは「月世界旅行(A Trip to the Moon)」という1902年の作品で、これはその名の通り、人間が月に行くという、おそらく最初期のSF映画です。これなんかすごいんですよ。人間が大砲の弾の中に入って、それを月に向かってバカでかい大砲でぶっ放すと月に着くんです(笑)。写真はこんな感じです↓
Tableau_01.jpg
月に行く計画中
Tableau_03.jpg
準備中
Tableau_07.jpg
人間を大砲につめて発射!
Melies_TripMoon_largest.jpg
命中
Tableau_11.jpg
月に到着!

という感じです。まさにファンタジーですよね。ちなみにメリエスは手品師でもありました。そんな彼にとってまさに映画というのは不可能を可能にして観客に驚きを与える絶好のツールだったんでしょうねー。そういった意味でも彼の作品は見世物としての映画、アトラクションとしての映画を代表するものと言えると思います。ちなみにこのエントリーの上の方に使ってた変なお月様の写真も実はメリエスの映画から取ってきたものだったりします。

メリエスのほかには、イギリスのヘップワース(Cecil Hepworth)なんかも有名で、彼の「車に轢かれるとどうなるか?(How it feels to be run over)」という1900年の作品は、カメラが地面に置いてあって、それに向かって車が走ってくるんですね。そんで、怖いと(笑)。それも映画ならではの画面、幻想の恐怖を体験するという点でホラー映画のはしりと言えるかも知れませんし、また物語があるわけじゃないですから、やはり見世物としての映画なわけですね。



3、映画文法の萌芽
さて、そんなアトラクションとしての映画の中でも段々と現在の映画につながる映画文法が芽生えてきます。その代表的なものとして;
1901年の「火事だ!(Fire!)」をとりあげたいと思います。この映画は、物語を軸に展開する映画です。火事が起こって、そこに住んでいる人が消防士に助け出されるまでのお話です。

この「火事だ!」の中には、明らかに編集によって物語の空間をひとつに保とうとする試みが見られます。住民が消防士に救出されるところがあるんですが、まず場面は部屋の中なんですね。部屋の中が燃えている。そんで消防士が助けに来て、火を消して住民を外に運び出すんですが、消防士が住民を窓のところに引っ張っていくまでは、場面はずっと部屋の中です。それが、住民が窓の外に出されると、その窓のところを外から見たショットに切り替わります。ここに編集、もっと正確に言うと、カットがありますね。でもそのカットは気づかれないように、巧妙に織り込んであります。だからカットを隔てた二つのシーンはまったく繋がっているように見えるんですね。この二つのシーンというのは、実際のところ別々の日に、まったく違う場所で撮られていたものであっても構わないわけです。でも、編集で繋がっているように見えるわけで、この編集でホントは繋がっていない二つのショットを繋がっているように見せる、というのが現代の映画文法の基本のひとつになります。たとえばメリエスの映画なんかにおける編集はこれとはまったく別で、舞台に近い感じになります。一つ一つの場面がそのまま一続きのショットであって、場面が変わるときにショットも変わる、という感じです。



ちょっと写真もなくてわかりづらいと思いますので、ここらへんの詳しい話は、次回、現代映画文法の祖と言われるグリフィスについて書くときに触れていきたいと思います。

ではでは。
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テーマ:研究 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント
この記事へのコメント
未だにPC不調ですが。。。
私もジョージメリエスの『A Trip to the Moon』は好きです。Hepworthは『Rescued by Rover (1905)』のナラティブ具合が大好きです。
『Takeshis'』がそうでしたが、現代映画は行き着いた映画文法を更に意識的にこねくりまわすので(それが既にスタンダードなのかもしれませんが)、やはりこの初期年代の映画を実際に見て文法を肌で感じるという行為は貴重ですよね。
2005/10/26(水) 15:18:45 | URL | Depper #hJZqYFTY[ 編集]
>Depperさん
日曜日はお世話になりました!
次回はぜひそちらに遊びに行きますね。

ご指摘のとおり、古い映画というのは映画文法が生のかたちでそのまま提示されているので、それを肌で感じるということは大事だと自分も思っています。映画学メモの方でも、読んでいただいてる方に実際の映画を見てもらえるといいんですけどねぇ・・・・。メレイスの映画とかHepworthとか、オンラインで見れるところなどご存知ですか?
2005/10/31(月) 19:22:18 | URL | タカ@映画学メモ #6SWgxDAM[ 編集]
はじめまして。興味深く拝見しています。
ご存知かもしれませんが、幻の洋画劇場というサイトでメリエス・ヘップワースの短編が見れました。有料ですが。

http://www.hollywoodparty.net/

メリエスの事をこちらのブログで初めて知りました。素敵ですね。
2005/11/25(金) 16:35:01 | URL | マルハ #-[ 編集]
すごい!
マルハさん、書き込みありがとうございました。

そして「幻の洋画劇場」すごいですね!こんなサイトがあったとは知りませんでした。こっちの図書館なんかでも手に入りづらい映画なんかあったりして、これから重宝しそうです。どうもありがとうございましたー。

ぜひこれからもちょくちょく遊びに来てくださいませ。
2005/11/25(金) 23:37:13 | URL | タカ@映画学メモの中に入ってる人 #6SWgxDAM[ 編集]
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