映画学メモ
日本ではまだイマイチ馴染みの薄い「映画学」なるものを、イギリスの大学から実際の映画学の授業に沿うかたちで紹介していきたいと思います。まー気楽にいきましょう。
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映画学入門 Week 5(その2)
なぜかお腹がすかない月曜日だったのですが、そんな今日はとても夕焼けがきれいでありました。

2、「戦艦ポチョムキン」を歴史上の文脈に位置づける

スゴイどーでもいいんですが、「ポチョムキン」って打って一気に変換すると「歩著無菌」って出るんですよ。なんかカワイクないですかーこれ!・・僕だけですか、そうですか。いまだにコンピューターラボから更新してるもんで、PCが変換覚えてくれず、ポチョムキンって打つたびに「歩著無菌」なんですよねー。
potemkin2.jpg

さて、映画というものは、どんな映画であっても多かれ少なかれ、なんらかの形でその映画を生み出した社会の状況に影響を受け、またその状況を反映しているものであります。史的、治的、会的、理的etc色んなケースがあるわけですが。でも、そんな社会状況と映画の関わりというものが、ソビエト連邦ほど深い場所もちょっとありません。特に、「戦艦ポチョムキン」の監督であるエイゼンシュタインが活躍していた1910年代、20年代、30年代あたりのソビエトにおける映画と社会の関わりっていうのはヤバイくらい深いんですね。ですから「戦艦ポチョムキン」とモンタージュ技法を理解するためには、当時のソ連の状況というのもちょっと知っておく必要がでてきます。

もちろん僕もあんま知らないわけですが、とりあえず「戦艦ポチョムキン」とダイレクトに関わってくる部分だけでも今回は書きたいと思います。なんせ話題が話題なのでだいぶ字ばっかりのつまんないエントリーになりそうですが、やっぱ大事なとこですので勘弁してくださいー。







・10月革命(1917年)
まず基本というか、いわゆるロシア革命として、世界初の社会主義国家ソビエト連邦が誕生したのが1917年10月の10月革命によってでありました。第一次世界大戦中ですね。「戦艦ポチョムキン」は1925年の映画ですから、革命の8年後にあたるわけです。ちなみにエイゼンシュタインはこの10月革命そのものをテーマにした「10月」という映画も撮っていて、彼のモンタージュ理論の壮大な実験になっています。

・1905年武装蜂起
これは僕もほとんど知らなくて申し訳ないんですが、1905年、まだ皇帝がいたロシアで武装蜂起があったんですね。これは鎮圧されてしまうんですが、1917年の革命の先駆けとして後に大きな意味を持つことになります。そして「戦艦ポチョムキン」っていうのは、この1905年武装蜂起の20周年を祝うための映画なんですよー。だからポチョムキンってのは映画の主題だけでなく、この映画制作というプロジェクト全体が、政治的な意味をもった映画なんです。

・ソ連と映画
革命ってのは、それまでの秩序やシステムが全部ひっくり返るわけじゃないですか。だからその権力闘争に参加している人間は何が起こっているか分かっていたとしても、田舎の人とかは何が起こっていて、革命後の政府が何をしたいのか、っつうかそもそもいったい何なのかとか分からないわけですよね。

ましてやロシアはめちゃくちゃ広いわけですから、ソビエト政府は革命を起こして臨時政府をやっつけたのはいいけど、まず自分たちがどういう主義主張に基づいて動いているのかとか、これからどうしていくのかとか、いかに今までの政府がダメだったか、とかを広いロシアの隅々まで伝えなければいけないわけです。

そこで目をつけられたのが映画だったんですね。映画にはそれが作られたお話だったとしても、まず「実写」としての映像の現実感があるわけです。特に1910年代20年代の話ですから、今よりもずっと映像の現実感ってのは強いわけです。そして映画ってのはよく夢と似ている、と言われるように、スクリーン上に映っていることを「これはおかしい」とか「こんなことはありえない」という風に考えずに受け止めるじゃないですか。基本的には映画の観客ってのは受動的に映像の内容を受け止めるっていう比率が大きいわけです。だからそういう意味でも映画ってのは政治的な主義主張を伝えるのにとても力のあるメディアだったんですね。これは今でもそうだと言えますが1910年代にもうソビエトの指導者たちは映画の力に気づいていたわけです。

もう一つの大きな要素は、当時まだロシア全体では識字率が低かった、ということです。パンフレットとか冊子みたいなものは読めないわけですから、そういった媒体で政治思想を伝えることはできない。となるとやっぱり映画が便利ですよね。

というような理由で、映画はソビエト連邦において政治思想を広めるために広く利用されました。「プロパガンダ列車(Propaganda Train)」っていうのがあって、その列車に上映道具一式積んで田舎の方までいって共産主義を称える映画とかを上映したわけです。

「戦艦ポチョムキン」も1905年武装蜂起の参加者を英雄として称え、皇帝軍を完全な悪として描いていますから、そういうプロパガンダ映画の文脈にあると言えると思います。

・映画の中にある共産主義イデオロギー、そしてその変化
というわけで、「イデオロギー」とは別に良い悪いではなくて主義主張ということでイデオロギーなんですが、ソ連の映画には共産主義の考え方が色濃く反映されることになります。代表的なものとしては、この時期のソ連の映画には、個人としての主人公っていうのは存在しないんですよね。ポチョムキンもそうですが、民衆・大衆といったものが主人公として扱われているんです。これは明らかに資本主義をブルジョワ個人主義として否定し、人民・大衆を国家の中心と宣言した共産主義の主張を反映させてるわけです。

また面白いことに、こういった映画の中に反映されている政治思想も一定ではなくて政治状況の変化とともに変わっていくことになります。例えばレーニンの死後スターリンが権力の座について、独裁体制を固めていくにつれて、スターリンは「スターリン」という個人のイメージを前面に押し出していくことになります。「ソビエト連邦の偉大な父親」「偉大な指導者」という自分のイメージを植えつけようとするんですね。そうすると、映画の方もそれに対応して、それまでの「大衆が主人公」という映画たちがなくなって、一人の主人公がしっかり存在する映画が増えてきたりしちゃうんです。「Chapaev(チャパエフ)」という、主人公の名前を冠した映画まで出てくるんですよー。

「戦艦ポチョムキン」はまだ大衆が主人公として描かれていますから、スターリンの登場に伴う映画の変化が訪れる前、ということになりますね。



というわけで、駆け足で「戦艦ポチョムキン」を生んだソビエト連邦の様子を追っかけてきました。今回も、字ばっかりでごめんなさい。

次回はいよいよ「戦艦ポチョムキン」と、モンタージュについてです。

ではでは。
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コメント
この記事へのコメント
ソビエトモンタージュは熱い。
編集の持つ表現幅っていうのは相当広いですし、そこに作り手の強い意思が働くことはもとより、歴史的にながい時間で見てみると、モンタージュ技術が発達したのが当時のソビエトという場所でしたし、これは現代の商業映画にまで流れとして(意識されてるかは別として)絶大な影響を与えていることは言うまでもないかもしれませんし、ひとつの編集から次の編集、つまりカットからカットまでが伝統的に長いのが日本ということで、編集手法や傾向はその国の文化すら伝える表現媒体ということになったりもしますよねー。しかも、編集は意識していないとなかなかに視覚で捉え難い。そのあたりがどう作用するかは、次回なのかと。
次回のポチョムキンとモンタージュ楽しみにしてますねー。
2005/11/19(土) 05:03:10 | URL | Depper #hJZqYFTY[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2005/11/19(土) 15:15:26 | | #[ 編集]
>Depperさん
編集は、ホントに時代や地域性を表現しますよねー。最近はMTVに影響を受けた早め早めのカッティングなんかも流行ってますしね。個人的には編集というものが、ただ単に映像と映像を繋ぐというものから「編集」という映画独特の表現になったのがソビエト・モンタージュなのかなぁなんて思ったりして、そういう意味でもやはり大事な時期ですよね。でもここらへんのことについて書くのは難しい!今最後のパートを書いてたんですが、なかなか上手くまとめるのは大変です。
2005/11/20(日) 13:13:35 | URL | タカ@映画学メモ #6SWgxDAM[ 編集]
焼酎の美容効果
焼酎は蒸留酒の一種です http://racoon.thriftystmartin.com/
2008/12/06(土) 17:31:33 | URL | #-[ 編集]
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最近読み始めた映画理論に関する書物の中に、頻繁に顔を出すのがこの映画の監督エイゼンシュタインという名前。1898年、ラトヴィア出身。モンタージュ(いわゆる映画編集のこと)
2005/12/11(日) 06:46:42 | Re:逃源郷
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