映画学メモ
日本ではまだイマイチ馴染みの薄い「映画学」なるものを、イギリスの大学から実際の映画学の授業に沿うかたちで紹介していきたいと思います。まー気楽にいきましょう。
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映画学入門 Week7(その2)
ご機嫌いかがですか。

今日もチビチビいきますよ。
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そういえば今週末はパリに行ってまいります。木曜日から日曜まで。美術史の方の修学旅行みたいなもんなんですよー。今ダダイズムのかなり大がかりな展覧会をポンポドゥーセンターでやっているみたいなんで、それをメインに見に行ってくる感じです。
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ダダとかシュールリアリズムのあたり、専門?であります

というわけで、トーキー映画参上の続きでした。

2、トーキーはいつから始まった?

前回は、サイレント映画は別にサイレントだったわけじゃない、というお話をしましたね。ですから、トーキー映画のように、実際にスクリーン上の人物が喋っていることが聞こえる、というのをそれまでの弁士が喋ってたり生演奏が入ったりする音と区別して、「シンクロナイズド・サウンド」(略してシンク・サウンド;Sync-Sound)と呼びます。映像と音がシンクロしてるからシンク・サウンドですね。


そんでそのシンク・サウンドを作り出す試みはいつごろから始まったのかといいますと、これはあまりはっきりしないのですが、1919年くらいからだと言われています。「カリガリ博士」がつくられた年ですね。シンク・サウンドを取り入れた最初の劇場映画にして今回のお題「ジャズ・シンガー」が公開されたのが1927年ですから、それより大分前ですね。

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ジャズ・シンガー(1927年)
アラン・クロスランド監督
主演:アル・ジョルソン

シンク・サウンドの実用化となると、ジャズ・シンガーの一年前、1926年に、ワーナー・ブラザーズ(ジャズ・シンガーもワーナー)がシンク・サウンドを使った短編映画を作っています。これが結構人気があったみたいですね。でも、ここではまだシンク・サウンドって言っても音楽だけで、セリフは入っていなかったんだそーです。

実は「ジャズ・シンガー」でもシンク・サウンドは音楽と歌だけ、しかも映画の中の重要な場面のみになる予定だったんですが、もともと舞台でのエンターテイナーだった主演のアル・ジョルソンがアドリブでいきなり喋りだしちゃって、史上初のセリフ付き映画ってことになったんです。ここらへんちょっと面白いですよね。やっぱり「映画が喋る」ってのが音楽や歌よりもすごいインパクトがあったらしく、このアドリブによって「ジャズ・シンガー」は大ヒットしたんだとか。

ちなみに撮影後に音声をつける「アフレコ」ってテクニックはジャズ・シンガーの二年後、1929年にキング・ビドー監督の「ハレルヤ」で初めて使われたのでした。



3、トーキー映画の映画産業への影響

さて、言うまでもなくこのシンク・サウンドの登場は映画の仕組み、ひいては映画産業の仕組みを大きく変えることになります。その影響の主なものを見ていきましょう。

☆映画文法的「後退」? - カメラの動きの制限

初期のトーキーにおいては、音声を録音するためのマイクがスタジオのどっかに隠してあるわけですね。しかも、遠すぎると音がちゃんと録れなくなるから、それなりに役者に近いところになきゃいけない。そんでそのマイクも今みたいに小さいやつじゃなくて、ゴッツイやつなわけですよ。そうなると、マイクを写してしまわないように、カメラとカメラワークはすごく気を使わなきゃいけなくなります。「こっからは撮れない」って角度が増えちゃうんですよねー。

またカメラを動かしている雑音が入ってしまうので、カメラはマイクの近く(=役者の近く)まで寄れなくなります。

ですからカメラの使い方がすごく制限されることになっちゃって、それまでかなり複雑に発展していた映画文法は、一時的に後退・停滞することになってしまいます。

ここらへんのジレンマは、名作ミュージカル、「雨に唄えば」(1952年)にとても楽しく描写されているので、ぜひ見てみてください。この問題が解決するのは、その場で音声を録音しなくても済むアフレコの技術が実用化されてからになります。

☆突然「声」を要求されることになる俳優たち

それまでの映画俳優ってのは、別にいい声をしてる必要とかなかったわけです。当たり前っちゃ当たり前で、声が入らないわけですから。でもシンク・サウンドの登場によって、彼ら彼女らは、突然喋らなきゃいけなくなります。魅力的な喋り方とか、いい声とかを要求されることになるんですよね。ですから、サイレント映画の時代にキャリアを築いた大物俳優が、トーキーの登場によって没落する、というケースがいくつも出てくることになります。勿論グリフィスが見出したリリアン・ギッシュのようにこの変化をものともせずに生き延びる俳優もいるわけですが、多かれ少なかれ俳優はみんな影響を受けたようですね。

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リリアン・ギッシュ
「東への道」の主演女優はリリアンギッシュでありました。

ちなみにこの俳優たちの受難もまた「雨に唄えば」ではイキイキと描かれております。この映画は映画自体がサイレントからトーキーへと移る流れについての映画なので、この時期のことを楽しく理解するにはとてもいい教材です。

☆女性映画監督たちの受難

これはあまり知られていないことのようですが、トーキー到来以前のハリウッドには、結構女性映画監督というのが沢山いたのでした。ところがトーキーが登場すると彼女たちの多くは監督の職を失ってしまうことになっちゃうんですね。なんでかっていうと、トーキーは新しいテクノロジーですし、音響機材が入るわけですから、映画の制作費が跳ね上がり、大雑把な言い方をすると「安い制作費の映画を沢山つくる」から「高い制作費で、確実にヒットを狙える映画を少数つくる」にスタジオの方針がシフトするんですよ。そんで映画監督の数自体が削られることになり、女性監督が何人も職を失っちゃうんですよね。

ここらへんのことについては詳しく書いてる本があるんですが、今ちょっと手元になくて、大雑把な話でごめんなさい・・

映画監督って、基本的には男の人の方が多いじゃないすか。よくフェミニズムの文脈なんかでも、映画監督に女性が少ないことが話題になったりするんですよね。でもサイレント映画時代にハリウッドでがんばってた女性監督が沢山いて、彼女たちの多くがサイレントからトーキーへと変わっていく流れの中で消えていった、っていうのは結構知られてなかったりすることなので、ちょっと覚えておくと面白いと思いまーす。



今回は結構時間がとれたので、やや色々と書くことができました。トーキーのところは次回ちゃんと終わらせたいなぁ。

ではでは、また。
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テーマ:映画 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント
この記事へのコメント
はじめまして。履歴から来ました。映画学ですか。面白そうですね。映画は大好きです。

淀川長治さんの講演会のメモをエントリーしたところです。よかったら見てくださいませ。

ポンピドウセンター行きたいです。美術も好きで学生の頃行きました。

では、また。
2005/12/07(水) 07:10:53 | URL | agathe #-[ 編集]
>agatheさん
はじめまして!
書き込みどうもありがとうございました。

そちらのBlogにもお邪魔して、淀川さんの講演会のメモ読ませていただきました。映画学ってのはかなりひねくれた映画との付き合い方ではありますが、淀川さんみたいな感性を忘れちゃいかんなと思いましたねー。

ぜひまた遊びに来てくださいませ。
2005/12/07(水) 11:51:32 | URL | タカ@映画学メモ #6SWgxDAM[ 編集]
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2008/11/28(金) 18:59:08 | URL | #-[ 編集]
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