映画学メモ
日本ではまだイマイチ馴染みの薄い「映画学」なるものを、イギリスの大学から実際の映画学の授業に沿うかたちで紹介していきたいと思います。まー気楽にいきましょう。
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映画学入門 Week9(その4)
なんか妙に早起きしちゃいましたよ。
なんで朝もはよから大学のコンピューターラボへやってきました。
誰もいねーコレ。
今掃除のおばちゃんが僕のすぐ横で思いっきり掃除機かけてます。

2006.jpg
2006年も映画学メモはダダイズム(と新宿ダダ)を応援しています。

さて未だにClassic Hollywoodなわけですが・・・


2、Classic Hollywoodのテクニック

ということで、前回までダラダラとあげてきたClassic Hollywoodの特徴というものをかたちにするテクニックというのをちょっと見てみましょう。ここも基本は前回触れましたContinuity Editing(リンク)ということになります。編集によって映画が組み立てられているということを意識させないこと、それと観客が映画に没頭している状態をキープすることがおおまかに言うとContinuity Editingの肝でして、これがClassic Hollywoodのテクニックの核になる部分です。もちろん他にも光の使い方とか演技の方法とか色々あるわけですが、とりあえずContinuity Editingを押さえておけばOKだと思います。

んでこのContinuity Editingというのも様々なテクニックの集合体なわけですが、そのうち「180度ルール」(リンク)「動作上の接続(Match on Action)」(リンク)はこれまでにとりあげてきました。ちょっと読んでみてくださいね。今回はこれに加えて;
☆視線の一致(Eyeline Match)
☆主観視点(point-of-view shot=POV)
☆Establishing Shot/Master Shot(ちょっと日本語の訳が考え付かなかったんで、後で説明しますー)
といったあたりを簡単に取り上げてこうと思います。

☆視線の一致(Eyeline Match)

これはClassic Hollywoodに限らず今でもフツーにハリウッド・ハリウッド以外を問わずに使われてるテクニックなんですが、簡単に言うと映画のキャラクターが画面の外を見て、その次のショットでそのキャラクターが見ているものを僕らが見る、というやつです。

例えば最初のショットで
20060104092130.jpg
こう人が右側を見てて、次のショットで
ufo.jpg
彼が見ているものが映る、みたいな。
っていうかどんだけいいかげんな絵なのって話ですよ。

あとよくある感じの例だと、
1、部屋に一人でいる人がいて、画面にその人だけ映っている
2、ノックの音(画面の外から)
3、その人がドアの方を見る
4、ドアが映って、ドアが開く
みたいなのがよくありますね。

このEyeline Matchでは誰かが何かを見て、観客がすぐにそれを見る、という自然な流れがあるからそこに編集があるってことに気づきにくいわけですよね(「編集の存在を気づかせない」)。また、キャラクターが見ているものを見るわけですから観客がキャラクターの立場に立つ、という効果もあります(「映画に対する没頭状態のキープ」)。ただ後者に関して注意しなければいけないのは、次に説明する「主観視点」と違ってEyeline Matchにおいてはキャラクターが見ているものを観客が見ていても、それは必ずしもキャラクターの視点として(つまりキャラクターの場所から)見ているとは限らない、ということです。例えば上のUFOの例だと、まったくもってわかりづらいことこの上ないですが、UFOのショットはUFOと同じ高さ(空中)から撮られてたりするわけですよ。そこらへんが「主観視点」とちょっと違います。


☆主観視点(point-of-view shot=POV)
というわけでこちらは完全にキャラクター(主に主人公)の視点として撮られたショットであります。point-of-viewを略してPOVなんて言ったりします。Eyeline Matchと組み合わされることもありまして、フツーにキャラクターが画面の外を見て、次のショットでキャラクターが見てるものをキャラクターが見てる場所から見る、というのがPOVになるわけですね。ただ他にもPOVには色んなパターンがあります。例えばPOVのポイントのひとつは「キャラクターが見てるものを見る」というよりも「キャラクターが見てるように見る」というところにあります。ですから主人公がなんかスゲー大変なこととかあってフラフラになって歩いているときにゆらゆら動く風景の映像を見たり、特殊部隊の主人公がドアを蹴破って部屋に入っていく時にそのまますごい勢いで動く部屋の映像を見たり、ってのもPOVのよくある使い方です。

そしてこれは勿論文字通りキャラクター(しつこいようですが主に主人公)の視点にたってものを見るわけですから、観客を映画に対して没頭させる(映画の中に入り込ませる)ことと、観客にキャラクターに対して感情移入させることに絶大な効果を発揮します。なんでPOVが主に主人公に対して使われるかというと、この感情移入の効果があるからでありまして、前回あたりClassic Hollywoodの特徴としてとりあげたようにClassic Hollywoodの映画には一人の明らかな主人公がいて、観客がその主人公に感情移入・同一化(identificationと言います)することによって物語が進んでいきます。POVはその同一化を引き出すため極めて有効なテクニックということになります。ここらへんはPOVがまったくない映画を考えてみると分かりやすいと思います。そうすると観客は完全に主人公を外から見るわけじゃないですか。ですから主人公「として」見るPOVがある場合に比べると感情移入や同一化の効果は弱くなる場合が多いです。


☆Establishing Shot/Master Shot
さて、最後にさっき日本語に訳せなかったコレです。まずEstablishing Shotですが「Establish」っていうコトバには「確立する」とか「うちたてる」みたいな意味があります。これはどんなショットかというと、映画の一番最初とか場面転換直後なんかに、これから物語が進む場所を遠めから、その場所の全体像が分かるように撮ったショットのことをいいます。Establishing Shotってのはグリフィスの時代から何重にもなってることが多く、例えば;
1、遠目から田舎の風景。遠くに町
2、町の全体像
3、その一部、主人公の家
4、家の中。物語スタート
みたいな感じでよくあります。こういう感じで物語を見せる・はじめることによって観客を自然に物語の中の空間に引き込んでいくこと、それと「これからここで物語が進んでいきますよー」という空間的な情報・状況を観客にはっきりと知らせてあげることによってその後の観客の混乱を防ぐ、という意味合いがあります。例えばいきなり家の中から始まったりしたら、ここがどこなのか、どんな場所なのかっていうことが観客に伝われないわけですから、物語が進んでいく上で何らかの混乱が生じる可能性が高くなっちゃうわけです。

そんでMaster Shotですが、これも基本的に空間的な情報を伝えるという点ではEstablishing Shotと似ているんですが微妙に違うところもありまして、後者が物語の最初などに空間の全体的な状況を見せていたのに対し、Master Shotは一つ一つの場面などの細かい単位でその空間全体を見せてキャラクター同士の空間的な位置関係などをはっきりさせる役割を担います。例えば、家族四人が食卓を囲んで会話している場面があったとします。ここで少なくともClassical Hollywoodの映画では、人物の表情などを見せるために家族一人ずつが映ったショットを組み合わせて場面を組み立てていく可能性が高いです。お父さんだけのショットとかお母さんだけのショットとかですね。でもそれだけだとその食卓を囲んで誰がどこにいるのかとか、誰と誰がと隣り合っているのかとかが分かんなくなってきちゃうじゃないですか。そんな時がMaster Shotの出番でして、一人ずつが映ったショットの合間に食卓全体を撮ったショットを時々入れて、人物の位置関係が分かりにくくならないようにするわけです。

今は家族四人の例を出しましたが、例えば人間二人だけが会話してる場面でもMaster Shotは使われますし、極端な話人間が一人しかいなくても、例えばその人の顔のアップの直後なんかにその人がその空間の中でどういう位置にいるのかってなことをはっきりさせるためにMaster Shotは使われたりします。



というわけで、Classic Hollywoodのテクニックなんてのは勿論他にも沢山あるんですがとりあえず重要かなーなんて思うあたりをいくつか紹介してみました。俺もそんなに知らないですし・・・。でも180度ルールとかMatch on Actionとか、前に書いた部分も合わせると結構な分量になっちゃいましたね。まぁ一つ一つちゃんと分かってなきゃいけないってもんでもないので、暇なときにでもどうぞ。

なんだかんだで今回も終わらなかったー。んぎゃー。
次回こそは、感動のClassic Hollywood最終回(なハズ)です!

ではでは、また。
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テーマ:映画 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント
この記事へのコメント
たかちゃん、ごぶさた。

思わず熟読。Establishing shotだっけ?これってアメリカの映画のみならず、ドラマとかでもよく使われてますね。風景写真の拡大を例にとってますが、たいていの人気ドラマって、その舞台が都会なのか田舎なのか、オフィスなのか家なのか、っていうところでクローズアップされていく映像を使ってるし、イギリスでも、Eastendersなんて、まさに衛星写真からアルバートスクエアまでほんの数秒で説明しちゃうわけだよね。ほぉほぉ。卑近な例があると、面白い。その裏側にある理論って言うのが、人の感覚との関連性が見えて(そして、それにまんまとはまってる自分がわかって)面白いねー。

というわけで、感想でした。

お仕事(?)がんばってねー。
2006/01/07(土) 05:36:06 | URL | hiroyuki in Singapore #-[ 編集]
お久しぶりですー
hiroyukiさんお久しぶりです!

感想いただいてありがとうございます。自分はドラマはよくわからないんですが、基本的にはClassic Hollywoodの文法をほぼそのまま使ってるような印象があります。

物語がどういったところで起こっていて、そこの空間的な人間関係がどんなのか、ってやっぱり大事ですよね。そこらへんも含めてハリウッドの心理学ってのが働いてくるんだと思います。

ぜひまた遊びにきてくださいませー。
2006/01/09(月) 11:51:24 | URL | タカ@映画学メモ屋さん #6SWgxDAM[ 編集]
個人的には日本は映画よりもTVドラマの方が案外雛形的なハリウッド要素や形式、フォーマットや物語構造が出来上がっているような気がしています。だもので、その5の記事にもあるようなことが映画ではなく日本ではTVドラマでは可能なのではないかと思っています。
2006/01/11(水) 01:01:14 | URL | Depper #hJZqYFTY[ 編集]
TVドラマ
>Depperさん

確かに僕もドラマについてはハリウッドっぽいなーと思ってしまいます。ドラマはあまり見ないので詳しいところは分からないんですが・・・

でも日本の映画界って邦画だとアニメが強かったり、マンガという巨大市場が存在することもあって不安定、というか、決まった型がないですよね。そこらへん、「月9」なんて言われてなんか安定してそうなドラマだったらできるのかも知れません。
2006/01/12(木) 13:44:09 | URL | タカ@映画学メモの中に入ってる人 #6SWgxDAM[ 編集]
ジャム研究所
ジャムの検索サイト。イチゴジャム、ブルーベリージャム、梅ジャム、あんずジャム、ターボジャムなどジャムに関する各種情報をお届けしています。 http://martyrology.santamonicatravelodge.com/
2008/11/15(土) 17:36:51 | URL | #-[ 編集]
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