映画学メモ
日本ではまだイマイチ馴染みの薄い「映画学」なるものを、イギリスの大学から実際の映画学の授業に沿うかたちで紹介していきたいと思います。まー気楽にいきましょう。
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映画学入門 Week14(その1)
どうもこんにちはー。

banana.jpg

早いとこ映画学入門再開といきましょう。

ちなみにですね、前回の映画学入門(カサヴェテスの最後の回)、コメント欄の方で、かよこさんからカサヴェテスの処女作「Shadows」が1959年でシネマ・ヴェリテが主に1960年代のムーブメント(代表作のひとつ「ある夏の記録」が1961年)だとすると、シネマ・ヴェリテがカサヴェテスに影響を与えたとは言えないのではないか?というご指摘を頂きました。確かにそーなんですよね。一応言い訳俺なりの考えもコメント欄で返事として書いておきましたけども、正確なところはやはり不勉強で分かりません。でも一応うちのセンセーはそういう風にレクチャーしてたんで、今度その先生にそこんとこ突っ込んでみようと思います。色々と聞いたらこちらで報告しますので。

さてWeek14とWeek15はR.W.ファスビンダーというドイツの監督の映画たちをお題にAuteur Theoryというものについて考えてみようと思います。一応本物の映画学入門ではWeek14を「不安の魂」、Week15を「ペトラ・ヴォン・カントの苦い涙」という映画でやっていましたが、映画学メモの方ではそこらへん柔軟にやっていきたいと思います。

今回の構成はだいたい;
1、歴史化(Historicising)ということ
2、Auteur Theory(映画における作家主議)とは?
3、ファスビンダーという人

こんな感じでいきましょう。

fassbinder1.jpg
レイナー ヴァーナー ファスビンダー
Reiner Werner Fassbinder(1945-1982)


fear20eats.jpg
不安の魂(Ali: Fear Eats the Soul) 1974年
監督;R.W.ファスビンダー


4.jpg
ペトラ・ヴォン・カントの苦い涙(The Bitter Tears of Petra von Kant) 1972年
監督;R.W.ファスビンダー

1、歴史化(Historicizing)ということ

Auteur Theoryについてやる前に、せっかくですからちょっと「歴史化」という概念について書いてみようと思います。歴史化って映画学だけのものではないし、映画学の中でもAuteur Theoryだけの話では全然ないんですが、Auteur Theoryあたりとは特に深く関係あるところなんであります。

「歴史化」とは、今僕らが当たり前だと思っているものや考え方が、実は過去のある時点に(しばしば意図的・人為的に)つくりだされたものである、ということを認識することです。ですから、映画でいうと、今僕らが当たり前だと思っている多くのものや考え方というのが実は映画の歴史の中で、さまざまな要素と絡み合いながらつくられてきた、ということですね。ミシェル・フーコーさんが言うように歴史化という概念にはとても深く政治的な意味・用法もあるのですが、とりあえず俺もそこらへんは詳しくないですし、今は深く立ち入らない方向で。

例えば前にアスペクト比の話をした時に、今僕らは映画が沢山ある映像メディアのひとつであることを当たり前だと思ってるけども、昔は映像=映画だった、なんてことを書きました。これもある種の歴史化でして、映画というメディアの位置づけを歴史化しているわけです。

他の例としては、昔(グリフィスが出てきた頃の時代=1910年代とかですね)は役者として映画に出演することはものすごく格が低いことで、演劇で仕事がなかったり成功しなかった役者がやることだ、みたいに見られていたそうです。今は、映画スターの方が演劇の役者よりも華やかに扱われていますよね。

その他にも;
・映画の政治的な役割
・映画における「物語」の役割
・「ハリウッド」の位置づけ
などなど、いくらでも歴史化して考えることができる要素はあるわけです。

んで、「歴史化」して考えることのメリットは大雑把に言って二つくらいあると思われます。

1、現在の基準・感覚では分からないことが見えてくる
 古い映画や映画運動などについて考える際に、今の感覚で考えると大したことねーよーなことでも、当時の衝撃はものすごかった、なんてことはよくあります。トーキー映画の登場なんかそうですよね。また数多くのエンターテイメントの中のひとつとして存在する今の映画と、完全に「エンターテイメントの王様」として存在していた20世紀初頭の映画なんかはやっぱり本質的に変わってくるわけで、そこらへんも考えて、当時の感覚なんかをできるだけ考慮に入れてみると色んなことが見えてくると思うわけです。

2、なぜそれが今のようなかたちになったか、を考えることができる
 これも大事なところだと思うわけです。つまり、ある考え方がなくなったり生まれたり変化したりするのには理由があるわけです。そして大抵誰かがそれによって得してるんですよね。特に映画なんてのは社会の色んな要素と関わってくるものですから、映画をとりまくものが変わってくる際には必ず理由があって、誰かが(意識的・無意識的に)それを望んでいると考えることができます。だから、今当たり前な顔してあるもの、要素が実は当たり前じゃない、なんてことはよくあるので、歴史化することによってそこらへんを考えることができるんじゃないかなーなんて思うわけです。

今回扱うAuteur Theoryなんてのは、もんのすごい平たく言うと;
映画監督を芸術家として扱おう!
っつう考え方なんですが、これなんかも娯楽としてしか見られていなかった映画に芸術としての地位を与えたい、みたいな動機がちゃんとあるわけです。まぁこれはもうちっと複雑な話で、そこらへんは次回やりますが。

なんにしろ、映画は生まれてから今年で111年、常に大衆娯楽であり商品であったわけですから映画の見方見られ方、社会的位置づけ、映画監督の社会的地位なんかもどんどん変わってきたわけで、そこらへんを考慮に入れるためにも歴史化Historicizingは大事になってくる概念です。



というわけで、軽く寄り道して歴史化の話なんぞしてみたのでした。
昨日のエントリーで「明日更新します」とか言っといて、気がついたら日付が変わって「明日」のうちに更新できなかったっす。まぁ日付的には「昨日」のうちから取り掛かっていたのでよしとしてくださいませ。

次回はAuteur Theoryでございます。

ではでは。

タカ 
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テーマ:なんとなく映画 - ジャンル:映画

コメント
この記事へのコメント
おかえりなさいませー。
ご無沙汰しておりますが、なにやら波乱に満ち満ちたた旅立ったようでw 私は今年どこもいけなそうなので羨ましい限りです。
さて、今回の新しい章ですが、徐々に映画学のグレーなエリアに突入してきたなぁという感じですね。楽しみです。ちなみに、章のタイトルはどうしたもんでしょうかね??ぱっとうまいタイトルは思いつきませんでしたが・・・
2006/04/11(火) 04:42:15 | URL | Depper #hJZqYFTY[ 編集]
章のタイトル
忘れてたじゃないですか(笑)
次に書こっと。

Depperさん書き込みありがとうございました。Depperさんは相変わらずお忙しいみたいですね。World Cinemaがんばってください。

やっぱり映画学についてある程度やる以上は、映画学そのものも映画と同じように人工的、意図的につくりあげられてきたもので、それは単純に映画に関する「真実」や「事実」っていうものではない、ってあたりやっていかなきゃいけないかなーなんて思っていたのでした。「歴史化」もちょっとそういう文脈で考えています。


2006/04/11(火) 11:31:06 | URL | タカ@映画学メモ #6SWgxDAM[ 編集]
お忘れでしたか(笑)
最近は色々と一段落したところなのでした。とはいえ、自分の論文が遅れ気味なのはどうにかしなきゃあかんですが~(苦)

映画学って得てして「映画」をいろんな工具でいろんな形に分解する作業のような気がします。どんな工具でどう分解していくかはそれぞれですが、その行為は得てして人為的ではありますね~。それゆえ、映画学自体が「事実」「真実」を単純に追求するようなものではないという認識は大事ですね、巷ではそれを小難しくやってるのが映画学だろうなんて偏見が残念ながら見え隠れしますが。特に現代映画に関してはその歴史化が十分になされてないので、余計かもしれません。
Week14も楽しみに読ませてもらうことにしますっ。
2006/04/11(火) 18:33:15 | URL | Depper #hJZqYFTY[ 編集]
おぉ
>「えいが」をいろんな工具でいろんな形に分解

特に理由があるわけではないのですが、自分はなんとなく映画学を「分解」よりも「構築」(Construct)っぽく考えていたので、面白いなぁと思いました。なんかこう説明するのが難しいのですが、「映画学は映画ではない」というような感じで。

でもどちらにしろ

>映画学自体が「事実」「真実」を単純に追究するようなものではない

というあたりは同じですよね。この認識があってこそだといつも思います。
2006/04/15(土) 13:43:09 | URL | タカ@映画学メモ #6SWgxDAM[ 編集]
バナナ組合を芸術家として扱おう!
かよこさんが「注目の的」になっていましたね。かよこさんは注目されていないと安らげない人らしいので、彼女のためにはよかったでしょう。
どういう流れで「アメリカの影」が生まれたのか私もとても気になります。先生から回答をいただいたら、ぜひ教えてください。お願いします。
2006/05/02(火) 16:29:10 | URL | 本を拾いに海へ飛び込むカリーナ #-[ 編集]
バナナ組合はすでに芸術という噂
>カリーナ

かよこさん安らげるといいよね。うちで雇ってる庭師もかよこさんのこと心配してたよ。前よりは調子よさそう、って言ってたけど。

ちょうど明日あたりジェフに会えるかも知れないので「アメリカの影」の話、聞いてみる予定です。
2006/05/04(木) 01:37:58 | URL | タカ@映画学メモを買うともれなくついてくる #6SWgxDAM[ 編集]
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