映画学メモ
日本ではまだイマイチ馴染みの薄い「映画学」なるものを、イギリスの大学から実際の映画学の授業に沿うかたちで紹介していきたいと思います。まー気楽にいきましょう。
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映画学入門Week14(その5)
早いもので五月も半ばであります。
今は学年末テストの期間なのでみんなピリピリしてるんですよね。
映画学メモの中に入ってる人は今年はテストないんですが、去年はこの時期忙しかったのでした。

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っつうか気がついたらもうWeek14に一ヶ月かかってるわけですよ。
どの辺が「Week」だっつう話です。

早いとこ次いきましょう。
今日はWeek14の最後、映画監督R.W.ファスビンダーについてでございます。

3、W.R.ファスビンダーという人

俺の知る限りでは、日本って海外のマイナーな映画監督でも結構ちゃんと作品が入ってきてるんですよね。学術的な評価というとまた別ですが、海外で(または本国で)評価/認知度が低いのに、日本ではそこそこ知られている映画監督とか案外いるんですよ。テキトーに例をあげるとイギリスのケン・ローチ、ギリシャのテオ・アンゲロプロス、最近だとチェコの(俺も大好きな)ヤン・シュバンクマイエル、といった辺りの監督がいます。イランの映画監督も人気ありますしね。もちろん相対的に、という話ですが・・

そんな日本なんですが、このファスビンダーという監督においては事情が逆で西洋世界で認知度が高く、日本ではまだあまり知られていない、という感じがします。まぁドイツの人なのでしょーがないっちゃしょーがないのですが、このBlogで取り上げてるように映画学の基礎で出てくるわりには日本ではあまり知られていない人なんですよね。でも最近DVD-BOXが出たみたいです。

fassbinder1.jpg
R.W.ファスビンダー(1945-1982)

この人はもんのすごい多作な人です。15年くらいのキャリアの中で、撮った映画がなんと40本以上!ちょっとありえないレベルですよね。もともと演劇から出てきた人なので演劇もやりつつこの数字です。すごすぎ。この人のフィルモグラフィを見ると、同じ年に何本も撮ってるのがフツーなんです。

映画学入門で出てきた彼の映画は
「不安の魂」が1974年
「ペトラ・ヴォン・カントの苦い涙」が1972年の作品でありました。

んで彼についてマトモに書こうとするとそれこそWeek14が永久に終わらないので、やはり簡単に書かざるをえないわけですが、とりあえず覚えておいていただきたいのは、彼が映画のもつ政治的・社会的な力を非常に洗練された方法で追及した、ということでしょうか。ここらへんは色んな側面において、ゴダールなんかと比較されてもいいんじゃないかなーと思います。

彼の映画がもつ大きな特徴を二つ、簡単にあげますと・・・

☆ブレヒト効果

これはあちこちで出てくる概念なんですが、映画におけるブレヒト効果というと、映画が映画であることを隠さない、ということです。これはWeek10のゴダールんとこでもちょっとやりましたね。これファスビンダーの得意技なんです。ただ、単純にブレヒト効果、というよりはその発展形とも言えますが、そこらへんの詳しいところはとりあえずとばします・・すいません。

Week3やWeek9のあたりを見ていただければわかるのですがハリウッドのContinuity Editingというシステムの中では、映画を見ている観客に、「今は映画を見ているのであって、これは現実ではない」ということを忘れさせるのがひとつの基本になります。

ファスビンダーは自分の映画の中で、このシステムを内側から破壊するようなことをよくするんですよね。例えば英語でObsessive Framingと呼ばれる、同じものをズーっと映し続ける、というテクニックがあります。フツーの映画ってのは、まぁ簡単に言えば、いいタイミングで映像が変わったり動いたりすることで映画の世界に没頭したままでいられるわけじゃないですか。退屈しない、というか。でもファスビンダーは同じものを動かさないままズーっと撮ってるので、見てる方が我に返るというか、映画に対する没入状態が解除されてしまうわけです。

そうすることによって、観客が映画についてある種の「覚めた」状態で考える、というのが(単純に言うと)ブレヒト効果の狙いなんですよね。「映画について」っていうのは映画のないようについてもそうだし、「映画」というシステムについてもここでは問題になりますよね。映画が観客に信じ込ませようとしてることとか、映画がいかに観客をコントロールしようとしているか、ですとか。

ファスビンダーは「考える観客」を求めていて、また自分の映画を「読んで」欲しがっていた、とよく言われます。これはファスビンダーが映画のエンターテイメント性を無視していた、というわけではなくてですね、むしろ映画がエンターテイメントなものであるからこそこういう可能性を見出していた、と言ったほうが適切な感じだと思います。

詳しく書けんでホントすいません・・

☆ファスビンダー的「悪循環(Vicious Circle)」

ファスビンダーは人間の感情や、人間関係というものがもっているネガティブな側面を隠さずに映画で描こうとした人でした。それは一対一の人間関係でもそうだし、社会の中での人種差別とかについてもそうだったと言えます。

つまり

社会的な弱者が、自分たちよりもさらに立場の弱い人間を利用/搾取する関係ですとか、「ペトラ・ヴォン・カントの苦い涙」のように、相手が自分に行為をもっているのを知って利用する関係、そしてその利用されている人間も全く同じように別の他人を利用する、といった感じのですね、まさに「悪循環」をハッピー・エンドなしで描くわけです。

でもさっきもちょっと書きましたけども、ファスビンダーは映画のエンターテイメントとしての側面を疎かにはしておらず、むしろここで利用するんですよね。つまり、映画の持っている「主人公に感情移入してしまう」という構造をあえて利用して、このあんまり関わりたくない人間関係のなかに観客を引き込んでしまうわけです。このわざと引き込む、っていうのとブレヒト効果でわざと遠ざける、っていうのをうまーく使い分けて彼は映画を見ている観客に人間関係や社会のことについて考えさせる映画をつくっている、と言えるように思います。まぁだいぶ単純に説明してますが・・。もちろんほかの映画監督と同じように彼の映画もだいぶ好き嫌いが分かれるんですが、好きな人にとってはものすごく力のある映画です。

ちなみに「不安の魂(Ali:Fear Eats the Soul)」も、モロッコ系移民で社会的に差別をうける立場にいるアリと、清掃員をしている労働者階級の、もう若くはないおばちゃんの物語でありまして、二人とももともと社会的に弱い立場なのに、その二人が一緒にいることもまた社会的に許容されず、また二人もお互いにお互いを利用せざるをえない・・・という映画でして、色んな社会的な差別の構造、というのをかなり力強く描き出している映画です。まぁ「楽しい」という映画ではないですが、機会があればぜひ見てみてくださいませ。




ということで、駆け足でファスビンダーやってみました。
ホント色々書くことがある人なのですが、簡単にしかかけなくてすいませんでした・・・。そろそろ先に進まにゃいかんなーと思いまして。。。

次回はもうちょっとポップな感じでホラー映画についてのお話(予定)です。

ではでは、また。







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コメント
この記事へのコメント
ドイツのハリウッド映画を作るのが夢だったファスビンダー
「ほんの数分でもいいから、優しさの幻想を持てるように」とファスビンダーはいっていたようです。このことば、好きです。
ファスビンダーがハリウッド的手法を使ったのは、彼が単純にハリウッド映画への憧れを抱いていたのもあるのかなと思います。彼がサークの作品を好きだったことにもあるように。ファスビンダーはあるインタビューの中で、自分の映画はまだサークには達していないようなことをいっていました。「達していない」というのが印象的でした。
そしてtakaさんに朗報。ファスビンダーとパゾリーニそれぞれの伝記を並べた本があるようです。内容は二人の関連性を考察したものとのことです。
2006/05/23(火) 13:39:47 | URL | 小石の家に住むかよこ #-[ 編集]
ファスビンダー
かよこさんコメントありがとう!

そうだね、ファスビンダーについては、理論的な方しか書けなくて、そういうかよこさんが書いていたような、ファスビンダーの「暖かさ」みたいなものには触れられなかったねぇ。けっこう人情派だものね、ファスビンダー。

でも「ほんの数分でもいいから、優しさの幻想を持てるように」、この言葉は初めて聞いたよ。素敵だね。

ファスビンダーとパゾリーニの伝記を並べた本ってのはすごい気になる!確かにこの二人を比べたらいろんなものが見えてきそうな気がします。今度本の名前わかったら教えて~。

2006/05/25(木) 23:47:11 | URL | タカ@小石の会 #6SWgxDAM[ 編集]
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